第57回「住田海事賞三賞」が決定

2025.12.1

海上保険の形成過程を歴史的観点から編んだ書籍が受賞

一般社団法人日本海運集会所

住田海事奨励賞管理委員会


 第57 回「住田海事賞三賞」が2025 年12 月1日に発表されました。この賞は、海事全般に関する専門図書を表彰する「住田海事奨励賞」、海事史に関する専門図書を対象とする「住田海事史奨励賞」、舶用・造船関係および広く海事技術に関わる専門図書または論文から選ばれる「住田海事技術奨励賞」で構成されています。
 日本海運集会所内の住田海事奨励賞管理委員会で候補作を検討した結果、「住田海事奨励賞」に「覇権・暴力・保険 海上保険の形成と発展」(著者:新谷哲之介、所属:東京海上日動火災保険株式会社)が選ばれました。「住田海事史奨励賞」と「住田海事技術奨励賞」の両賞は該当作はありませんでした。
 25 年11 月12 日に「住田海事奨励賞」の授賞式を日本海運集会所で執り行い、受賞した新谷哲之介氏に賞状と賞金が授与されました。
 住田海事賞は、海運、造船事業に長く従事する傍ら、海事資料の刊行や廻船式目の研究などを通じて海事文化の発展に広く寄与した故・住田正一氏の功績を記念して創設されました。ご子息の住田正二氏(元運輸事務次官、元JR 東日本相談役)が1969年に「住田海事奨励賞」を創設し、2002 年に「住田海事史奨励賞」が、08年に「住田海事技術奨励賞」が設けられました。


【海事奨励賞】
新谷 哲之介 著
「覇権・暴力・保険 海上保険の形成と発展」

 本書は保険の原点である海上保険がなぜ戦争保険という特殊な危険を対象としているのかを歴史的経緯から示す海上保険の形成過程に関わる著書である。著者は18 世紀から19 世紀を海上保険の形成途上期と位置づけ、この時期に多発した武力・暴力・政治的リスクが船主や貿易商らの大きな懸念となり、海上保険は略奪や戦乱によって形成、発展してきた側面があると指摘する。
 構成は全11章。英米における海上保険の歴史、奴隷貿易やアヘン戦争での海上保険の役割など、海上保険の形成過程で重要と思われる歴史上の事件に焦点を当て説明をしている。その事件に関わる判例や用語解説の記述もある。著者の歴史的教養と豊富な専門知識を結び付けてわかりやすく解説している。こ うした書籍はこれまでになく、また海上保険に馴染みのない人にも新たな気付きや理解を促す内容である点が評価された。 

体裁:A5 判/ 270 頁
定価:2,970 円(税込)
発行:保険毎日新聞社                                        

新谷 哲之介氏 プロフィール
1994年東京海上火災保険株式会社入社、2022年日本保険学会賞受賞、2025年現在東京海上日動火災保険株式会社海上業務部勤務(シニアエキスパート)

【本件に関するお問い合せ先】
一般社団法人日本海運集会所 総務グループ
TEL:03-5802-8361
FAX:03-5802-8371
MAIL:jse@jseinc.org